東京・世田谷の静かな住宅地に2009年に開業した「タヴェルナアリーチェ」は、中田陽（あきら）さんがほとんどの時間を一人で切り盛りする、20席弱のトラットリアだ。
　19歳で料理の世界に入った当初から、独立志望だった中田さん。成功するには武器が必要と、本場の手打ちパスタを習得するために21歳で渡伊。「1年間で集中的に学びたかったので、ボローニャではまず手打ちパスタに合わせるラグーを、リグーリアではトロフィエを、プーリアではオレキエッテを、というようにはっきりとした目標を立て、イタリアに渡りました」（中田さん）。
　現在、看板メニューとするのが「ミートソースストロッツァプレーティ」1600円だ。噛みごたえのあるこの手打ちのショートパスタに負けないよう、牛のホホ肉と首肉、パンチェッタなどで作った力強いラグーを合わせる。なお成形時に、あえて生地のねじれを不揃いにしたり、麺ごとの太さを少し変えるのが、中田さんの生地作りの特徴。触感やソースのからみ具合に変化を出し、最後まで飽きずに食べられることを狙ったものだ。これは他の料理も同様で、食材の切り方やゆで加減に変化をつけ、「食べていて楽しい料理」を心がける。
　料理はすべて単品で提供。パスタは17～18品。前菜や主菜は、「ツナと白インゲン豆と赤玉ねぎのサラダ」950円や「ウサギとグリーンオリーブの煮込み」2400円）など「仕込みをしっかりしておけば、比較的スムーズに提供できるもの」を中心に、計15品ほどを揃える。「手打ちパスタは乾麺に比べてゆで時間が短く、また生地と素材、ソースの組合せでバリエーションがつけやすいので、私一人で調理する当店に向いています。今後はパスタだけでなく、前菜や主菜も充実させていきたいですね」と話す。